■□ 団体交渉に決められた法則・方程式はない □■
労使対等に立つ団体交渉は労働組合運動の原点です。
この団体交渉の進め方には、様々な場面が予想されます。
団体交渉に「このやり方でやるべし」などという法則や方程式はありません。
団体交渉の目的である“要求を実現する”ために、目の前の交渉をどのように進行するのかがオルグ者や労働組合の役員に求められます。
この見極めがその後の団体交渉の行方を左右します。
≪極意1≫団体交渉は事前の準備が力に・・・調査能力を高める
はじめに、団体交渉相手の企業調査を徹底的に行うことです。
調査方法としては、インターネットを通じて公表されている最低限の情報を入手するとか、業界紙や広報誌、法務局(法人登記)、税務署(納税実績)、社会保険事務所(滞納や未納等の状態)、監督署・ハローワーク・自治体(助成金や補助金の実績)など、あらゆる方法を駆使して、交渉の議題に関する情報・資料を集めることです。
特に、労働者からの聞き取りは大変重要です。
聞き取りは、組合員はもとより意識的に非組合員や退職者に目を向けるべきです。
その後の団体交渉をすすめる上で、必ずこの情報収集が役立つことになります。
この調査から労働実態も浮き彫りになるし新たな要求も生まれます。
≪極意2≫団体交渉を生きた学習の場に・・・経営者の「無知と無視」を見抜く
団体交渉は労働組合運動の生きた学習の場です。
多くの経営者は労働組合の存在を嫌い、できれば「労働組合はないほうがいい」「何が労働組合だ、俺が法律だ」と、考えています。
経営者のこんな認識を変えるためにも、団体交渉にはじめて参加した組合員のためにも、この場を労働組合の生きた学習の場に意識的にすることです。
労働基準法や労働組合法がどんなものか知らないという経営者も多くいます。
経営者の「無知と無視」を見抜くことが必要になります。
団体交渉前には、当該労働者との事前の準備・打ち合わせをして誰が何を語るかまでしっかり意思統一し、交渉での役割を分担(漫才のボケとツッコミのようなもの⇔厳しく追求する人と抑える人)を決めることです。
当該労働者は、要求の具体的事例を切実に語り(多少声を張上げて家庭を犠牲にしてまで会社のためにつくしてきたことなどを訴える)、オルグ者や組合役員は、労働者に対して、「まあまあ興奮することなく」と抑えながら、要求の法的根拠で経営者を鋭く追及することが必要です。
これが交渉の役割分担です。
経営者へ語ると同時に、その場にいる参加者にも、「要求の正当性を認識させる」ことが生きた学習の場となります。
そして第1回団体交渉でもう一つ大事なことがあります。
要求に対する経営側からの回答で、「理解できる」という言葉を出させることです。
この「理解できる」という回答は、後の交渉に大きな力を発揮することになります。
≪極意3≫「アメとムチ」政策の学習を徹底的に
労働組合運動に欠かせない学習の一つに、「不当労働行為を学ぶ」があります。
労働組合法第七条の不当労働行為で出てくるのが、労働組合をつぶす目的の「アメとムチ」政策です。
経営側が語る「アメ」とは、「よく従業員をまとめてくれた(労働組合のこと)」「その手腕を管理職で生かしてほしい(破格の昇進)」などと、労働組合を骨抜きにする目的で使ってくる手段です。
一方、「ムチ」とは、アメとは対照的に「イジメと脅し」で、徹底的に力ずくで労働組合を弱体化することを目的にしています。
このような労働組合つぶしの「アメとムチ」政策に対しては、その場で機敏にきびしく反撃をすることです。
組合員のモチベーションを高めることにもなります。決して軽視しないことです。